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【医業経営ニュース】Vol.80「長期収載品の処方等又は調剤について 選定療養の導入(その2)」

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既報の通り、2024年10月より長期収載品の処方等又は調剤について、選定療養が導入されます。
本号では、長期収載品に関する疑義解釈(2024年7月12日付、同年8月21日付)について解説します。

■医療上の必要性の判断について
「医療上の必要性」は、以下が想定されています。

長期収載品と後発医薬品で薬事上承認された効能・効果に差異がある場合
後発医薬品を使用した際に、副作用や、他の医薬品との飲み合わせによる相互作用、先発医薬品との間で治療効果に差異があった(安全性の観点等)と医師等が判断する場合
学会作成のガイドラインにおいて、長期収載品を使用している患者について後発医薬品へ切り替えないことが推奨されており、それを踏まえ、医師等が判断する場合
後発医薬品の剤形では飲みにくい、吸湿性により一包化ができないなど、剤形上の違いにより、判断する場合
ただし、単に剤形の好みによって長期収載品を選択することは含まれない

①については、長期収載品と後発医薬品の効能・効果の際に関する情報が掲載されているサイトの一例として、下記を示しています。
・PMDA「医療用医薬品 情報検索
・日本ジェネリック製薬協会「効能効果、用法用量等に違いのある後発医薬品リスト」(2023年9月14日時点)

③については、例として日本神経学会の「てんかん診療ガイドライン2018」で、「後発医薬品への切り替えに関して、発作が抑制されている患者では服用中の薬剤を切り替えないことを推奨する」、「先発品と後発品の治療的同等性を検証した質の高いエビデンスはない。しかし、一部の患者で先発品と後発品の切り替えに際し発作再発、発作の悪化、副作用の出現が報告されている」とされていることについて、医療上の必要性があると医師等が判断する場合には、保険給付の対象となると示されています。

④については、「使用感など、有効成分と直接関係のない」理由については、医療上の必要性の判断対象外としています。ただし、医師等が①~④に該当し、医療上必要であると判断する場合には、保険給付の対象となると示されています。

なお、保険薬局の薬剤師については、以下のとおり示されています。

①~③ 医療上の必要性について懸念点があれば、医師等に疑義照会することが考えられる
医師等への疑義照会は要さず、薬剤師が判断することが考えられる
その場合には、調剤した薬剤の銘柄等について、当該調剤に係る処方箋を発行した保険医療機関に情報提供すること

医師等が後発医薬品を銘柄名処方し、「変更不可(医療上必要)」欄に✓又は×が記載されていない場合に、薬剤師として長期収載品を調剤する医療上の必要性があると判断される場合については、変更調剤に該当するところ、2024年3月15日付事務連絡「現下の医療用医薬品の供給状況における変更調剤の取扱いについて」にて、当面の間、疑義照会なく、変更調剤可能としています。
そのうえで、医療上の必要性の判断の観点から、本稿1ページ目の薬剤師記載の通りとなると示されました。

また、一般名処方についても以下のような考え方が示されています。
「一般名処方の処方箋を薬局に持参した患者が長期収載品を希望した場合には選定療養の対象となる」としているところ、患者が薬局にて、長期収載品を希望し、薬剤師がその理由を聴取した際に、患者希望ではあるものの、患者の疾病に関し、長期収載品と後発医薬品における効能・効果等の違いがある等の医療上の理由と考えられる場合には、④の通り保険薬局の判断で保険給付とすることが可能となります。

■公費負担医療について
医療保険加入者で、国の公費負担医療制度により一部負担金が助成等されている患者、子供医療費助成などの地方単独の公費負担医療の対象となっている患者が長期収載品を希望した場合、いずれにおいても、医療上必要があると認められる場合は、従来通りの保険給付となります。それ以外の場合は、長期収載品の選定療養の対象となります。
なお、生活保護受給者である患者が長期収載品を希望した場合についての取扱いについては以下のとおり示されています。

【長期収載品の処方等が医療扶助の支給対象にならない場合】
「生活保護法第五十二条第二項の規定による診療方針及び診療報酬」(昭和34 年厚生省告示第125 号)第2に基づき、生活保護受給者については、長期入院選定療養以外の選定療養は医療扶助の支給対象とはならないとしている。
このため、生活保護受給者である患者が、医療上必要があると認められないにもかかわらず、単にその嗜好から長期収載品の処方等又は調剤を希望する場合は、当該長期収載品は医療扶助の支給対象とはならないため、生活保護法(昭和25年法律第144号)第34条第3項に基づき、後発医薬品処方等又は調剤を行うこととなる。
【長期収載品の処方等が医療扶助の支給対象になる場合】
長期収載品の処方等を行うことに医療上必要があると認められる場合は、当該長期収載品は医療扶助の支給対象となる。

生活保護受給者である患者が、単にその嗜好から長期収載品を選択した場合には、医療上の必要性が認められず、かつ保険医療機関又は保険薬局において後発医薬品を提供することが可能である場合には、長期収載品を医療扶助又は保険給付の支給対象として処方等又は調剤することはできず、後発医薬品を処方等又は調剤することとなる旨も示されています。

■処方箋について
本制度の施行は2024年10月1日となるため、それ以前に処方された長期収載品については、10月1日以降に処方箋が持ち込まれた場合、および10月1日以降に2回目以降の調剤のためにリフィル処方箋や分割指示のある処方箋が持ち込まれた場合は制度施行前の取り扱いとなります。

■院内掲示について
院内及びウェブサイトに掲示する内容については、こちらをご参照ください。

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