【医業経営ニュース】 Vol.70「2024年度診療報酬改定 検討状況レポート 12 ─ 入院医療に関する項目 ─」
1月31日の中医協‘総会(第582回)において、個別改定項目の提示が再度行われました。
入院医療の評価について高齢者の救急患者をはじめとした急性疾患等の患者に対する適切な入院医療を推進する観点から新設された「入院料」について、また、疾患・状態と処置等の医療区分と医療資源投入量の関係性を踏まえ、医療区分に係る評価体制の見直しが行われた「療養病棟入院基本料」について、本レポートで取り上げます。
■地域包括医療病棟入院料(新設)
地域において、救急患者等を受け入れる体制を整え、リハビリテーション、栄養管理、入退院支援、在宅復帰等の機能を包括的に伴う病棟の評価が「地域包括医療病棟入院料」として新設されます。
高齢者の救急患者等の増加が今後も見込まれる中、入院医療のあり方についてこれまで議論されており、75歳以上の患者に多い疾患のうち、一部は急性期一般入院料1と地域一般入院料を算定する場合を比べた際に医療資源投入量について大きな差が見られなかったことや、急性期一般入院基本料を算定する病棟においてリハビリテーション実施率のばらつきがあることによりADLの低下等が課題とされました。
これらを踏まえ、地域包括医療病棟入院料においてリハビリテーション、栄養管理等が施設基準として定められることとなりました。
(上記イラスト引用元… 2023年12月15日(第573回)中医協総会資料 『入院(その8)について』スライド№56)
地域包括医療病棟入院料に係る施設基準(2024年1月31日時点)
看護職員 | 10対1(●割以上が看護師) |
専門職 | 常勤の理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士を●名以上配置 |
管理栄養士 | 専任の常勤の管理栄養士が●名以上配置 |
構造設備 | 入院早期からのリハビリテーションを行うに必要な構造設備を有する |
体制整備 | ・当該病棟に入院中の患者に対して、ADL 等の維持、向上及び栄養管理等に資する必要な体制が整備されている ・地域で急性疾患等の患者に包括的な入院医療及び救急医療を行うにつき必要な体制が整備されている |
平均在院日数 | ●日以上 |
在宅復帰率 | ●割以上 |
自院の一般病棟から転棟した患者割合 | ●割未満 |
救急の実施 | 救急用の自動車等により緊急に搬送された患者又は他の保険医療機関で区分番号●●に掲げる救急患者連携搬送料を算定し当該他の保険医療機関から搬送された患者の割合が●●以上である |
重症患者割合 | 重症度、医療・看護必要度Ⅰ ●割以上 又は 重症度、医療・看護必要度Ⅱ ●割以上 |
点数 | ●点 |
※●は2024年1月31日時点では発令されていないものとなります。
■療養病棟入院基本料の見直し
平成30年度診療報酬改定において療養病棟についてデータ提出加算が要件となり、包括範囲の検査・処置等の実態を分析することが可能となりました。医療区分についての医療資源投入量の分析結果について、「疾患・状態としての医療区分3」と「処置としての医療区分1~3」の組合せについて、医療資源投入量が2~3倍の違いがあることを踏まえて、評価分類の見直しが行われます。
【現行】医療区分3分類 × ADL区分3分類 = 計9分類 ↓ 【改定案】(医療区分9分類 × ADL区分3分類 = 27分類) + スモンに関する3分類 = 計30分類 |
新設区分 1~30 (現行区分 A-I) |
ADL区分 | |||||
3 | 2 | 1 | ||||
疾患・状態に係る医療区分 | 3 | 処置に係る医療区分 | 3 | 入院料1 (入院料A) |
入院料2 (入院料B) |
入院料3 (入院料C) |
2 | 入院料4 | 入院料5 | 入院料6 | |||
1 | 入院料7 | 入院料8 | 入院料9 | |||
2 | 処置に係る医療区分 | 3 | 入院料10 | 入院料11 | 入院料12 | |
2 | 入院料13 (入院料D) |
入院料14 (入院料E) |
入院料15 (入院料F) |
|||
1 | 入院料16 | 入院料17 | 入院料18 | |||
1 | 処置に係る医療区分 | 3 | 入院料19 | 入院料20 | 入院料21 | |
2 | 入院料22 | 入院料23 | 入院料24 | |||
1 | 入院料25 (入院料G) |
入院料26 (入院料H) |
入院料27 (入院料I) |
|||
スモン | 入院料28 | 入院料29 | 入院料30 |
中心静脈栄養については、患者の疾患及び状態並びに実施した期間に応じて異なる医療区分が適用されます。
該当の区分 | 疾患・状態・実施した期間 |
医療区分3 | ・広汎性腹膜炎 ・腸閉塞 ・難治性嘔吐 ・活動性の消化管出血 ・炎症性腸疾患 ・短腸症候群 ・消化管瘻 ・急性膵炎 ・中心静脈栄養を開始した日から30日以内の場合に実施するもの |
医療区分2 | 医療区分3に該当する患者以外で中心静脈栄養を開始して30日を超えて実施するもの |
また新たな加算として、『静脈経腸栄養ガイドライン』等を踏まえた栄養管理に係る説明を実施した上で、経腸栄養を開始した場合に一定期間算定可能な「経腸栄養管理加算」が新設されます。