【医業経営ニュース】 Vol.53「新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴う医療提供体制の移行及び公費支援の具体的内容」
2023年(令和5年)5月8日より、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけがインフルエンザ等他の疾病と同様の「5類」に移行することに伴い、幅広い医療機関において新型コロナの患者が受診できるようになるために今年に入り段階的に検討されていた各種対策・措置について、この4月20日に最終改正版が通知されました。
今回は当該事務連絡「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う医療提供体制の移行及び公費支援の具体的内容について」から、[外来医療体制][入院医療体制][宿泊療養・自宅療養の体制][患者等に対する公費負担の取扱い]についてまとめています。
■外来医療体制
≪基本的な考え方≫ 各都道府県においてこれまで整備してきた体制も踏まえ、コロナ診療に現在対応中の医療機関に加え、新たな医療機関を増やすことで、広く一般的な医療機関での対応を目指す |
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新型コロナの診療に対応する医療機関を増やすための取組 | |
①感染対策の見直し | 個人防護具の選択について
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院内のゾーニング・動線分離について
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②設備整備等への支援 | 必要となる設備整備に対する補助を引き続き実施 |
G-MIS の活用による個人防護具が不足する患者受入れ医療機関等からの緊急配布要請に対する配布対応については、患者に新たに対応する医療機関も含めて実施 | |
③応招義務の整理 | コロナり患やその疑いがあることは診療を拒否する「正当な事由」に該当しない |
発熱等の症状を有する患者を受け入れるための適切な準備を行い、診療が困難な場合には、少なくとも診療可能な医療機関への受診を適切に勧奨する | |
④啓発資材の活用 | 厚労省にて上記①~③の内容をわかりやすく説明するための啓発資材を作成予定 |
医療機関名の公表の取扱い | |
発熱患者等の診療に対応する医療機関名等を都道府県において公表する仕組みは当面継続 |
■入院医療体制
≪基本的考え方≫ 入院が必要な感染症患者への対応については、全病院で対応することを目指す
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医療機関の裾野を広げるための取組 | |
①感染対策の見直し | 個人防護具の選択について … 前表「①感染対策の見直し」と同様 |
病室の割り当て・換気について
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②設備整備等への支援 … 前表「②設備整備等への支援」と同様 | |
③応招義務の整理 … 前表「③応招義務の整理」と同様 | |
④啓発資材の活用 … 前表「④啓発資材の活用」と同様 | |
幅広い医療機関における入院患者の受入れの方向性 (各医療機関への依頼事項) | |
①重点医療機関等以外で入院患者の受入れ経験がある医療機関 |
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②入院患者の受入れ経験がない医療機関 |
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③重点医療機関等における対応 |
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④特別な配慮が必要な患者向けの病床の取扱い |
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■宿泊療養・自宅療養の体制
宿泊療養の取扱い |
感染症患者の外出自粛は求められなくなるため、隔離のための宿泊療養施設は終了 |
自宅療養の取扱い |
感染症法に基づく健康観察は必要なくなるが、陽性判明後の体調急変時の自治体等の相談機能は継続し、公費負担を継続 |
時限的・特例的に認められている電話や情報通信機器を用いた診療等の取扱い |
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■患者等に対する公費負担の取扱い
外来医療費の自己負担軽減 | |
①公費支援の内容
(9月末までの措置) |
感染症患者が外来で感染症治療薬の処方(薬局での調剤を含む。以下同じ。)を受けた場合、その薬剤費の全額が公費支援の対象(当該薬剤を処方する際の手技料等は支援対象には含まれない) |
対象となる治療薬はこれまでに特例承認又は緊急承認されたものに限定 ・経口薬「ラゲブリオ」「パキロビッド」「ゾコーバ」 ・点滴薬「べクルリー」 ・中和抗体薬「ゼビュディ」「ロナプリーブ」「エバシェルド」 |
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これらの薬剤のうち、国が買い上げ、希望する医療機関等に無償で配分している薬剤については、引き続き、薬剤費は発生せず、一般流通が開始し、国による配分が終了した薬剤については、全額を新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金の対象として補助 | |
②補助の実施方法 | 感染症緊急包括支援交付金の対象として補助する場合の補助の実施方法は、現行の同交付金の取扱と同様 |
入院医療費の自己負担軽減 | |
①公費支援の内容 | 感染症患者が当該感染症に係る治療のために入院した場合、医療費(窓口負担割合1~3割)や食事代の負担を求めるが、急激な負担増を避けるため、医療保険各制度における月間の高額療養費算定基準額(以下「高額療養費制度の自己負担限度額」)から原則2万円を減額した額を自己負担の上限とし、高額療養費制度の自己負担限度額が2万円に満たない場合にはその額を減額(9月末までの措置) |
以下については上記減額の対象外 ・入院中の食事代(高額療養費の適用対象ではないため) ・外来療養のみに係る月間の高額療養費算定基準額(入院療養を対象とするものではないため) |
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入院時に感染症治療薬の処方を受けた場合、その薬剤費について全額を公費支援の対象とするとともに、高額療養費制度の自己負担限度額から原則2万円を減額した額を自己負担の上限とし、この場合の治療薬に対する公費支援の取扱いについては、外来の場合と同様 | |
②補助の実施方法 | 移行後は感染症法に基づく入院勧告・措置は適用できないことから、上記減額に要した費用については、全額を新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金の対象として補助 |
通常の新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金の交付の仕組みと同様、減額措置を行った医療機関は、審査支払機関を通じて、都道府県に対して請求 | |
入院医療費の公費支援については、従来通り患者からの申請は必要なく、保険請求の枠組みを利用(医療機関においては、入院期間中に患者の所得区分について確認する必要あり) | |
通常、高額療養費制度の自己負担限度額は、被保険者等の所得区分に応じて決定されるが、今般の公費支援により、高額療養費制度の自己負担限度額から公費により減額を行う(当該減額措置後の自己負担額は下記の別表1、2の通り) ※ 減額措置は、高額療養費制度の自己負担限度額に医療費比例額が含まれない場合は2万円を減額することとし、医療費比例額が含まれる場合は、当該医療費比例額に1万円を加えた額を減額 |
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所得区分毎の高額療養費制度の自己負担限度額から、減額措置後の自己負担額を控除した額を、新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金の対象として補助 | |
入院医療費に係る自己負担額が、所得区分毎の高額療養費制度の自己負担限度額に満たない場合であっても、減額措置後の自己負担額を超えた場合はそれ以上の自己負担は発生せず、公費による補助の対象となり、また、高額療養費は月単位で支給されることから、本補助についても月単位で実施 | |
70 歳以上で高額療養費の所得区分が住民税非課税(所得が一定以下)である場合は、公費による減額措置後の最大の自己負担額は0円であり、現在と同様、入院医療費に係る自己負担は発生なし | |
入院時に感染症治療薬の処方を受けた場合、まずは、その薬剤費について、全額を公費支援の対象とした上で、残る自己負担について、上記補助の考え方を適用 | |
検査の自己負担 | |
発熱等の患者に対する検査については、抗原定性検査キットが普及したことや他の疾病との公平性を踏まえ、自己負担分の公費支援は終了 | |
重症化リスクが高い者が多く入院・入所する医療機関、高齢者施設、障害者施設における陽性者が発生した場合の周囲の者への検査や従事者への集中的検査を都道府県等が実施する場合は、行政検査としての取り扱い(実施対象者については、これまでと同様、従事者に加えて、自治体が必要と判断する場合には、新規入所者等を対象として差し支えなし) | |
行政検査についての[感染症法に基づきその費用の2分の1を国が負担し、内閣府の「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」の交付限度額において、行政検査の地方負担額と同額が加算される仕組み]は継続 | |
地方単独事業として実施している集中的検査について引き続き新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金の活用が可能 |
【別表1:当該減額措置後の自己負担額について(70歳未満)】
高額療養費自己負担限度額の所得区分 | (参考) 高額療養費自己負担限度額 |
公費による減額措置後の自己負担額 |
年収約1,160万円~ 健保:標報83万円以上 国保:旧ただし書き所得901万円超 |
252,600円 + 医療費比例額 |
242,600円 |
年収約770万円~約1,160万円 健保:標報53万円~79 万円 国保:旧ただし書き所得600万円~901万円 |
167,400円 + 医療費比例額 |
157,400円 |
~年収約370万円 健保:標報26万円以下 国保:旧ただし書き所得210万円以下 |
80,100円 + 医療費比例額 |
70,100円 |
~年収約370万円 健保:標報26万円以下 国保:旧ただし書き所得210万円以下 |
57,600円 | 37,600円 |
住民税非課税 | 35,400円 | 15,400円 |
【上表注記】高額療養費の多数回該当の場合は、それぞれの所得区分について、公費による減額後の自己負担額と、多数回該当時の自己負担限度額とのいずれか低い方を適用する。この場合、上段から順に140,100円、93,000円、44,400円、37,600円、15,400 円となる。 |
【別表2:当該減額措置後の自己負担額について(70歳以上)】
高額療養費自己負担限度額の所得区分 | (参考) 高額療養費自己負担限度額 |
公費による減額措置後の自己負担額 |
年収約1,160万円~ 健保:標報83万円以上 国保・後期:課税所得690万円以上 |
252,600円 + 医療費比例額 |
242,600円 |
年収約770万円~約1,160万円 健保:標報53万円~79 万円 国保・後期:課税所得380万円以上 |
167,400円 + 医療費比例額 |
157,400円 |
~年収約370万円 健保:標報26万円以下 国保・後期:課税所得145万円以上 |
80,100円 + 医療費比例額 |
70,100円 |
~年収約370万円 健保:標報26万円以下 国保・後期:課税所得145万円未満 |
57,600円 | 37,600円 |
住民税非課税 | 24,600円 | 4,600円 |
住民税非課税(所得が一定以下) | 15,000円 | 0円 |
【上表注記1】 高額療養費の多数回該当の場合は、それぞれの所得区分について、公費による減額後の自己負担額と、多数回該当時の自己負担限度額とのいずれか低い方を適用する。この場合、上段から順に140,100 円、93,000円、44,400 円、37,600 円、4,600 円、0 円となる。 | ||
【上表注記2】75 歳となったことで国民健康保険等から後期高齢者医療制度に異動する際、75 歳到達月については、前後の保険制度でそれぞれ高額療養費の自己負担限度額を2分の1とする特例が設けられていることに鑑み、今般の公費による減額措置においても、75 歳到達月における公費による減額後の自己負担額は、前後の保険制度でそれぞれ上段から順に121,300円、78,700円、35,050円、18,800円、2,300円、0円となる。 |