【医業経営ニュース】 Vol.52「新型コロナウイルス感染症に係る特例の見直しについて」
今年1月に政府が方針を決定し発表したとおり、5月8日以降、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行することとなりました。
これに伴い、医療提供体制における各種対策・措置等について段階的な見直しが行われることとなりました。
■延期または休止等の措置が講じられていた業務の再開
2023年(令和5年)3月27日の事務連絡「医療法等において定期的に実施することが求められる業務等について(周知)」において、2020年(令和2年)5月12日の事務連絡「新型コロナウイルス感染症の影響に伴う医療法等において定期的に実施することが求められる業務等の取扱いについて」(以下「令和2年事務連絡」)が廃止されることが通知されました。
これにより、「令和2年事務連絡」において“延期または休止等の措置をして差し支えない”とされていた下記の業務の再開が各医療機関に対して求められることとなります。
「令和2年事務連絡」において延期または休止等の措置が講じられていた研修・委員会等 ・医療安全に係る職員研修 ・医薬品の安全使用に係る職員研修 ・診療用放射線の安全利用に係る職員研修 ・医療機器の安全使用に係る職員研修 ・医療安全管理委員会 等 |
なお、これらの活動については従前通り、“オンラインで行う等の対応も可能である”旨が定められています。
■診療報酬上の特例の見直し
2023年(令和5年)3月31日付の事務連絡「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて」において、これまでの事務連絡「新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて」において示されていた診療報酬上の特例が、今年5月8日以降変更となることが示されました。
その中でも【医科診療報酬点数表に関する特例】に関して、以下にポイントをまとめておりますので参照ください。
(注:下表中の“感染症”という表記は、斜体表示のもの を除きいずれも“新型コロナウイルス感染症”を示す。)
【外来における対応に係る特例】 | |
感染症患者(疑い含む)に対し、必要な感染予防を講じた上で外来診療を実施した場合 | |
・外来対応医療機関(「診療・検査医療機関」から名称変更) | 300点(院内トリアージ実施料) |
・上記以外の医療機関 | 147点(B000の2 許可病床数100床未満の場合) |
感染症に係る診療において、家庭内の感染防止策や重症化した場合の対応等の療養上の指導を実施した場合 | 147点(発症日から7日以内)(B000の2 許可病床数100床未満の場合) |
外来対応医療機関として診療時間外等に感染症患者(疑い含む)の診療等を実施した場合 | 時間外加算、休日加算、深夜加算等(要件を満たす場合) |
【電話や情報通信機器(以下“電話等”を用いた診療等に係る特例】 | |
初診から診断や処方を行う場合 | 214点(初診料)※ |
慢性疾患等を有する定期受診患者等に対し、再診により診断や処方を行った場合 | 73点(電話等再診料)※ 又は74点(外来診療料) |
【慢性疾患又は精神疾患を有する定期受診患者】 電話等を用いた診療を行う以前より、対面診療において診療計画等に基づき療養上の管理を行い、「情報通信機器を用いた場合」が注に規定されている管理料等に基づく管理を行う場合 |
147点(月1回) (B000の2 許可病床数100床未満の場合) |
【精神疾患を有する定期受診患者】 電話等を用いた診療を行う以前より、対面診療において精神科担当医師が一定の治療計画のもとに精神療法を継続的に行い、通院・在宅精神療法算定患者に対して、当該計画に基づく精神療法を行う場合 |
147点(月1回) (B000の2 許可病床数100床未満の場合 |
※令和5年7月31日までに情報通信機器を用いた診療に係る施設基準の届け出が必要 |
【在宅医療等に係る特例】 | |
感染症患者(疑い含む)に対して、必要な感染予防を講じた上で往診診療を行った場合 | 300点(院内トリアージ実施料) |
感染症患者等から感染症に関連した訴えについて往診を緊急に求められ、速やかな往診を判断し実施した場合 | 950点(救急医療管理料1)+緊急往診加算 (要件を満たす場合) |
在宅療養を行う感染症患者であって、感染症に関連した継続的な診療の必要性を認め訪問診療を実施した場合 | |
感染症患者に対して、在宅酸素療法に関する指導管理を行った場合 | 2,400点(在宅酸素療法指導管理料 2その他の場合) |
【入院における対応に係る特例】 | |
重症・中等症等の感染症患者 | |
重症(※1)の感染症患者について、特定集中治療室管理料等を算定する場合 | [別表1]参照 |
中等症(※2)以上の感染症患者 (救急医療管理加算を算定できる入院料を算定している患者に限る) |
救急医療管理加算 1,900点(2倍)(14日を限度) ※継続的に治療が必要な場合は15日目以降も算定可 |
呼吸不全管理を要する中等症以上の感染症患者 (救急医療管理加算を算定できる入院料を算定している患者に限る) |
救急医療管理加算 2,850点(3倍)(14日を限度) ※継続的に治療が必要な場合は15日目以降も算定可 |
特定集中治療室管理料等の算定日数の上限を超えてもなお、以下に該当し、特定集中治療室管理料等を算定する病室での管理が医学的に必要とされる場合 ・ECMOを必要とする状態である場合 ・ECMOは離脱したものの人工呼吸器からの離脱が困難である場合 ・人工呼吸器管理に加えて急性血液浄化を必要とする状態である場合 ・急性血液浄化から離脱したものの人工呼吸器からの離脱が困難である場合 |
特定集中治療管理室等の算定日数の上限を超えても算定可 |
※1:人工呼吸器管理等を要する患者のほか、これらの管理が終了した後の状態など、集中治療管理室管理料等を算定する病棟における管理を要すると医学的に判断される患者を含む。 ※2:酸素療法が必要な状態の患者のほか、免疫抑制状態にある患者の酸素療法が終了した後の状態など、急変等のリスクに鑑み、入院加療の必要があると医学的に判断される患者を含む。 |
別表1
(事務連絡「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて」P.25-P.26より引用)
入院における感染対策の特例 | |
救命救急入院料等を算定する病棟において、感染症患者を必要な感染予防策を講じた上で入院させた場合 | [別表2]参照 |
一類感染症患者入院医療管理料を算定する病棟以外の病棟において、感染症患者を必要な感染予防策を講じた上で入院させた場合 | 二類感染症患者入院診療加算 250点 |
感染症患者を個室又は陰圧室に入院させた場合 ([別表2]に示す入院料又は一類感染症入院医療管理料を算定する病棟を除く) |
二類感染症患者入院診療加算 250点 |
別表2 (事務連絡「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて」P.27より引用) |
その他加算の取扱い等に係る特例 | |
【地域包括ケア病棟入院料】感染症患者を入院診療した場合 | 在宅患者支援病床初期加算 300 点 |
【療養病棟入院料】感染症患者を入院診療した場合 | 在宅療養支援療養病床初期加算 350点 |
【療養病棟入院料】感染症患者が入院した場合 | 「感染症の治療の必要性から隔離室での管理を実施している状態」とみなす |
感染症の妊婦について、入院中にハイリスク妊婦管理を行った場合 | ハイリスク妊婦管理加算 1,200点(10日/1入院) ※継続的な診療が必要な場合は11日目以降も算定可 |
感染症の妊産婦について、分娩に伴う入院中にハイリスク分娩管理を行った場合 | ハイリスク分娩管理加算 3,200点(8日/1入院) ※継続的な診療が必要な場合は9日目以降も算定可 |
必要な感染予防策を講じた上で、疾患別リハビリテーション料を算定する場合 | 二類感染症患者入院診療加算 250点 |
【新型コロナウイルス感染症患者の受入れに伴う手続き等への柔軟な対応について】 | |
特定入院料等を算定する病棟で感染症患者の入院を受け入れた場合の特例 | |
特定入院料算定病棟に入院させた場合 | 医療法上の病床種別と当該入院基本料が施設基準上求めている看護配置等により算定する入院基本料を判断の上、当該入院基本料を算定できる |
都道府県から受入病床として割り当てられた療養病床に入院させた場合 | 一般病棟入院基本料のうち特別入院基本料(607点)を算定可 |
障害者施設等入院基本料を算定する病棟に入院させた場合 | ・7対1、10対1:急性期一般入院料6(1,382点) ・13対1:地域一般入院料2(1,382点) ・15対1:地域一般入院料3(988点) を算定可 |
精神療養病棟入院料を算定する病棟に入院させた場合 | 精神病棟入院基本料のうち特別入院基本料(561点)を算定可 |
緩和ケア病棟入院料を算定する病棟に入院させた場合 | 急性期一般入院料6(1,382点)を算定可 |
15歳未満の感染症患者を小児入院医療管理料を算定する病棟に入院させた場合 | ・小児入院管理料1~4:急性期一般入院料6(1,382点) ・小児入院管理料5:地域一般入院料3(988点) を算定可 |
入院中の抗ウイルス剤に係る特例 | |
診断群分類点数表に基づき療養に要する費用の額を算定する感染症患者、地域包括ケア病棟入院料や療養病棟入院基本料等を算定している病棟に入院している感染症患者に、抗ウイルス剤(感染症の効果若しくは効果を有するものに限る)を投与した場合 | 当該薬剤に係る費用を算定可 |
【回復患者の転院受け入れに係る特例】 | |
感染症から回復した後、引き続き入院管理が必要な患者を受け入れた場合 | ・二類感染症患者入院診療加算 750点(3倍)(最初に転院した医療医療機関における入院日を起算日として60日を限度) ・救急医療管理加算1 950点(最初に転院した医療機関における入院日を起算日として14日を限度) |